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「放課後は絶対に顔を出してよ」
「わかってるよ、千夏」
「じゃあ、私は自分の教室に戻るから。またね」
リスやハムスターなどのげっ歯類を思わせる小柄な少女は、夏世にそう告げて教室を出ていく。
笑顔で手を振って見送っていた夏世だが、彼女の姿が見えなくなると表情が消えた。
しかし、次の瞬間にはいつもの夏世に戻る。
「あ、ソラ!」
ソラに気付いた夏世が手を上げた。
そんな彼女を見て、苦笑いを浮かべながらソラはカバンから弁当箱を取り出す。
「お弁当、忘れてたよ」
言いながら、隣の席――夏世の机に弁当箱を置く。
「あ、ごめん! ありがとう!」
夏世は言うが早いか弁当箱を自分のカバンにしまった。
「そういえば……」
ソラが口を開いた時、先生が教室に入ってくると同時にチャイムが鳴る。
(また、後で!)
二人はアイコンタクトし、頷きあった。
↓↑↓
放課後、夏世は女子テニス部の友達と一緒に部活に行った。
部活に所属していない、所謂、帰宅部のソラは帰るために昇降口へ向かう。
そこには、夜深ともう一人――生徒会長の並木明香の姿があった。
「水守夜深さん、先日お願いした件について考えてくれましたか?」
ハチミツのような甘く柔らかい声。
明香は夜深に頼みがあり話しかけたようだ。
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