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1 映想鏡
「僕」と「あの人」が出会ったのは夏だった。
キラキラとした太陽のもとで、生命は存分に輝いている夏に、僕は、あの人に出会ったんだ。
キラキラと眩しく輝くようなあの人に出会ったんだ。
あの人は黄金の髪を持ち、笑みを讃えていた。まさに女神、まさに統べるものだった。
あの人の言葉はまるで小鳥のようで、微笑みは野を渡る風のようで、あの人をずっと見ていたかった。
あの人に、僕は少しでも近づきたかった。
だけど、僕には美しいものなど何も持って居なかった。
あの人は僕に言った。
「汚らわしいから、見ないで」
そして僕の目はあの人によって奪われた。それは秋が始まろうとするころだった。
だけど、僕の心はすっかり冬の氷に覆われた。
僕の目にはもう光は戻らない。僕は何も見えない。でも、あの人を見ないで済むならそれでもよかった。僕の目を奪った人を恨むより、あの夏のあの人のことを覚えているほうがよかった。
だけど、あの人は結婚するという。僕の知らない人と。
僕は思った。思って、思って、思って、そして、願った。
あなたに見つめられるものになりたい
僕は鏡になった。あなたが鏡を見つめている間、僕はあなたを見続ける。
さぁ、ぼくをごらん
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