エピソード☆0☆

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エピソード☆0☆

「私、再婚することにしたの。やっと幸せがつかめそうなのよ。だからあなたはひとりで生きていきなさい。あと一年もしたら高校を卒業するんだからもう充分でしょう? 勿論卒業するまでは金銭的な面倒はみるわ。私は再婚相手のところへ行くからあなたはここでひとりで暮らしなさい」  久しぶりに会った僕を産んだ母親の言葉だった。  その言葉を聞いて、最初に思ったのは今までと何が違うのだろう? という事だった。  父親は僕が八つの時によそに女を作って家を出て行った。  それから母親は生きるためにホステスとして働いていた。  朝起きるとテーブルに1000円札が一枚置いてあるだけだった。  ほとんど顔を合わせることがなかったとしても、抱きしめてもらう事も撫でてもらう事もなかったとしても、周りからは母親は男にだらしないいやらしい女だと口さがないことを言われたとしても、僕は母親の事が大好きだった。  忙しいだけで僕の事を愛していると思っていたから。  だけど……俺は愛されてなんかいなかった。 ============================= ※光の一人称が変わるのは心境の変化と素の場合と猫を被っている場合があるからです。
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