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エピソード☆6☆ ①
「ピンポーン」
突然来客を知らせるチャイムが鳴った。
「んー誰だ? こんな時間に」
壁にかかった時計の針が示すのは二十二時半。
ドアを開けた正月の様子が明らかにおかしかった。
様子を窺っていると
「はじめ~。なぐさめてー」
酔っぱらっているであろう男が正月に抱き着いたのが見えた。
それを見た瞬間頭にかっと血がのぼるのが分かった。
「お、おい?」
「やっぱりお前の事好きなんだよー。ん―――」
この男は抱きしめた上にキスまでしようというのか!
「やめ、やめろって!」
「ん――――」
気が付くと俺は正月のすぐ背後に立っていて。
「一さん、その人恋人ですか?」
男を牽制するようにいつもは呼ばない呼び方で呼ぶ。
「え、いや、恋人――だった? かな? 今はきれいさっぱりわかれてこいつ結婚して嫁さんもいるんだけど……?」
だからなんでそこで疑問形……!
正月の返答に俺は眉根を寄せた。
いつまでもべたべたぎゅーぎゅーと抱き着いている男を力任せにべりっと剥がしどかっと足で蹴ってやった。
そしてそのままの勢いで急いでドアを閉め鍵をかけた。
「うおー、進! 大丈夫か?」
「うぃー。大丈夫ー。ごめーん帰るわー」
正月は心配そうにドア越しにそんなやりとりをしていた。
なんで? 本当は俺よりその男のほうがいいの?
俺が出ていけばよかった?
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