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②
検査の結果骨折はしていなかったが少し骨にヒビが入っているのが分かった。
利き腕だったので少し不便だな、と思った。
男は病院にいる間俺にずっと付き添ってくれて、喉が渇かないか? 痛いか? 大丈夫か? と気遣ってくれた。
そして会計も終わって、勢いよく頭を下げてきた。
「本当ごめん! その腕が治るまでキミが不自由ないようにするから!」
この男の誠実な態度に少し驚いて、そして興味がわいた。
もしかしたらこの男は……。
そう思ったら試さずにはいられなかった。
「何をしてくれるんです?」
この男が担任のように歪んでしまったとしても逃げればいいだけ。大丈夫。
「えっとごはん作ったり? 掃除したり? 洗たくしたり?」
「なんで疑問形……。僕の名前は葛城 光ひとり暮らしなのでほんと――に困るのであなたの家で面倒みてください。そうすればあなたの謝罪を受け入れます」
「あ……っと、俺の名前は正月 一、『しょうがつ いち』じゃないからな?」
とドヤ顔で言う男。無反応な俺に男は思い切り肩を落としていたが何を期待されたのか分からなかった。
こうやって騒がしく人のよさそうな男、正月 一との共同生活が始まった。
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