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エピソード☆4☆
俺が正月のところに世話になって二週間が過ぎた。
俺の右腕もわずかばかりの痛みを残し殆ど治っていた。
早い回復だ。若さのおかげか、はたまたここ最近の栄養状態と規則正しい生活のおかげか……。
俺は気になっている事があった。
正月は俺の世話を本当にかいがいしくやいてくれた。
おはようからおやすみまで。
お昼用に弁当を持たせてくれたり車で送り迎えをしてくれたり。
食事は相変わらず「あーん」だ。本当は最初から自分で食べる事ができた。
お風呂だって左手でなんとでもなった。
だけど俺はその事実を告げない。そして正月のその瞳の奥を探るように見つめるのだ。
正月はきちんと仕事もしている。その上俺の世話まで加わって、正月が仕事で遅い時には俺のお迎えのためだけに途中で仕事を抜けてくれたりもした。
明らかに疲弊していて。
流石にこれは申し訳ない。
「送り迎えは明日から……いい」
夕食の時そう切り出せば正月は少し目を見開いて、次に心配そうな顔を俺に向けた。
「ん? どうした? 学校で何か言われた?」
「…………」
今じゃ自分のほうがボロボロだというのに、俺の心配ばかりする。
どうしてこの正月一という男はこんなにも親切で、こんなにも優しくて、こんなにもこんなにも……俺を大切にしてくれるんだ……。
俺の心配をよそに「車内で歌でも歌って応援してくれ」という正月のふざけた台詞でうやむやにされた。
正月さん、こんな俺の事でも愛してくれる?
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