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「雄貴さん、夕飯食べていきますよね?」
さっきまでリビングで雄貴の髪を切る和馬の近くで一緒に雑談をしていたしおんが、キッチンに立ちながら言う。
「お、いいのか?」
「食ってけよ、ついでだし」
櫛で梳いて長さを確認し、はみ出しているところに微調整をかけていく。
もうすぐMVとアーティスト写真の撮影があるから切ってくれ、と雄貴が突然押しかけてきたのは1時間ほど前。
和馬は手持ちの道具で雄貴の髪を切っていた。現役美容師時代に使っていた道具は、流石にもう良い切れ味とは言えないが、それなりにまだ使える。
が、最近はしおんの髪をこまめに整えているので使用頻度が増えていた。後輩の現役美容師である杉山の伝手を頼って、そろそろメンテナンスに出してやらないといけない。
雄貴の短髪もそろそろ整って来て、時間は夕食にちょうどいい19時近く。しおんはタイミングを見てとって、冷蔵庫を覗いている。
「鍋でいいです?」
「何でもいいよ!」
「好き嫌いないですか?」
「全然」
「和馬さん、そろそろ終わる?」
「おう」
しおんはあれこれと食材を調理台に並べる。
「うーんと…」
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