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 明るく陽の光が射し込む、大きなガラス窓と白っぽく洒落たインテリアの美容院。  和馬はそのドアを開け、受付カウンターにいた女性に、杉山に会いに来たことを告げる。  彼女は和馬から名前を聞くと、店内にいた杉山を呼んできてくれた。  杉山は、和馬が美容師として働いていた頃の最後の後輩で、今でも時々連絡を取り合う仲だ。 「お久しぶりっす、先輩」 「忙しいとこ悪ぃな」  平日の昼下がりとあって店内はそれほど混んではいなかったが、店長代理の杉山は自分の客とスタッフたちの管理で、それなりに忙しいだろう。 「大丈夫っす。あ、でもちょっと待っててもらえます?」 「おう。待たせてもらうわ」 「あと10分くらいで手空くんで」  杉山はそう言って待合の椅子を和馬に勧め、受付の女性に声をかけてお茶を出すように指示を出す。  椅子に座り、コーヒーを出してくれた彼女に礼を言う。それから、持参した道具を取り出してあらためる。
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