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ぐあ、とのどの奥から呻きが漏れた。灼けるような痛みは全身に、心を押しつぶす苦悩は、あらゆる記憶を呼び起こした。流れるすべての映像は、逃れようにも許されない、辛い過去ばかり。
目を開けた方がましだ、とまぶたを開こうとして、ざらりとした布の感触をとらえ――ふっと、感情が静まった。
五感が戻ってくる。痛みは変わらない。だが、添え木や包帯などの手当ての跡があり、横たわった体にはごわごわとした布が掛かっていた。それから、ひどく軽い足音がすぐ隣まで近づいて、止まった。
「目が覚めた?」
高くて細い声だ。女というより、子供に近いと感じて、馬鹿な、と否定した。自分の倒れた場所に、子供がいるはずがない。
「……ここは、どこだ」
万が一とかけて発した質問には、ひどくあっさりした、けれどとんでもない答えが返ってきた。
「昼の国と、夜の国の境」
そこは、戦場――不毛の大地であり、わずかな枯れた草木と、死体の広がる荒野だった。
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