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「あの、大丈夫なんです。ただ私、上履きで……」
双葉先輩に右手を繋がれたまま、梨子は視線を落としてもじもじした。
「ははっ、避難訓練ならOKでしょ。それより、大丈夫?」
「あ、はいっ、えと、あの」
避難訓練という上手な言い回しに聞き入ってしまった。まずはお礼を言いたいのに、ただでさえ人と話すのが苦手な梨子は、繋がれたままの手にもドキドキして、余計に口籠ってしまう。
「変なことされてない? ぬまっち、ちょっと気持ち悪かったでしょ。ごめんね」
“気持ち悪かったでしょ”
ストレートすぎる表現に気が抜けて、梨子は少し笑いそうになった。
それにしても、双葉先輩が謝ることではないのに、と、なんだか手間をかけさせた梨子の方が申し訳ない気持ちになってくる。
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