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「あの、ありがとうございました。写真を一枚、頼まれて……あっ」
梨子は、外したまま握りしめていた眼鏡に気が付いて、慌ててそれをかけた。今の梨子にとって高校生活に必要不可欠なものだ。
転入が決まった時、少しでも変装になればと買った、ピンクがかった茶縁の丸めの眼鏡。度無し。おしゃれ過ぎずダサくもないものを選んだつもりだった。
梨子は、恐る恐る視線を上げた。
すると、双葉先輩は不思議そうな顔をしていた。特に何も勘付いていないようで、梨子はほっとした。
「あ、もしかして俺のこと見えてなかった?」
「……見えてます」
「そ? なら良かった。てか写真て……。本格的に気持ち悪いやつだったね」
やっぱり天然?
梨子の頭の上に、双葉先輩は優しく手を乗せた。嬉しいような、恥ずかしいような。反応に困っていると、突然校舎の方から人が飛び出してきた。そして、低くよく通る声で怒鳴った。
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