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梨子の高校生活の目標は、“普通の青春”を満喫すること。これから始まるはずの普通の日々を、初日から台無しにされたくはなかった。
「一枚くらいいいだろう? ほら、まずはその眼鏡をとって」
沼地先生が手を伸ばしたら、梨子に届いてしまうだろう。
(一枚。一枚で済むなら……)
手を握りそう決心すると、右手で眼鏡をはずして俯いた。
けれど、待っていても反応がなく、沼地先生の鼻息音も止まっていた。
不思議に思って俯いていた顔を上げると、梨子の方を見る先生の顔がみるみる青くなっていく。
まるで、お化けでも見たかのような。
でも、梨子はおばけじゃない。体調が悪くなってしまったのかなと心配になった瞬間、コツコツ、と、背後の窓が軽やかにノックされた。
「キャッ」
反射で振り向いた梨子の目の前には、窓に張り付きそうなほど接近した顔があって、驚いて尻もちをついた。
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