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「……猫、は、見てない」 沼地先生は、声を絞り出すように言った。 「そうかあ。あと捜してない場所は、んー」 この変な状況になんとも思わないのだろうか。 何か考える様子で窓枠に頬杖をつき、あっさりと背を向けそうになった生徒会長に、梨子は待ってと心の中で叫んだ。 「あ、」 梨子の心の声が届いたはずはないけれど、生徒会長は振り向いて梨子の目をまっすぐに見た。そしてまるで応えてくれるかのように、またふわんと笑った。 「梨子ちゃんも手伝ってくれる? 猫探し」 「……へ」  突然名前を呼ばれて驚いた梨子は、ぽかんと口を開けた。梨子が一方的に知っていただけで、会ったことも話したこともないし、生徒会長の目に止まるような目立つこともしていない。
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