1

5/10
前へ
/11ページ
次へ
 生徒会長が訴えかけるように首を傾げると、焦げ茶の前髪が二重まぶたの上でさらりと揺れた。鼻筋が通っていて、唇は薄すぎず厚すぎずきれいな形で、口角が上がってる。 転校前の梨子は、“イケメン”と称される男子と接しなければならない機会が多く、梨子はその類の男子が苦手だった。 でも、不思議と、生徒会長にはその独特の苦手感がしない。それどころか、今まで出逢った誰にもなかった魅力を感じた。 だた顔がいいだけじゃなく、まるでお日様のようなぽかぽかした温かい雰囲気。それは、出そうと思って出せるものではないことを梨子は知っていた。 「だめ? 人手が必要なんだけど。いや、手じゃなくて目かな」  まるで懐っこい犬のような瞳だと梨子は思った。丸くて、茶色がかっていて、透き通っている。かっこいい、というよりも、可愛いのが合っているかもしれない。 でも、やっぱり喋ることは少しずれている。この部屋の張り詰めた空気はすっかり溶けきっていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加