3.平沢祐樹の策略

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 俺はその瞬間意識を失ったらしい。気付けば朝だった。ソファの上でスマホを握り締めたまま倒れこんでいる。慌てて宮坂に電話をかけ直した。だがワンコールもされることなく留守番電話へと切り替わってしまう。 (あれは夢だったのか?)  だがスマホの録音アプリを見るとちゃんとデータが残っている。再生をタップして耳をあてた。宮坂が少女に声をかけている様子が録音されている。やはり夢ではない。だが……。 (少女の声がまったく入っていない)  少女が話していたと思われる部分はすべて〝ザザ……〟というノイズに置き換わっていた。だが通話の最後、一瞬だけ少女の声を聞きとることができる。俺との会話だ。 ――お前は……誰なんだ ――ザザ……ザザ……ヒトクイ。  宮坂はそれきり行方不明。彼は早くに両親を亡くし身寄りがない。会社の人から捜索願が出されたようだが何といっても彼は成人男性である。まともには取り合ってもらえなかったようだ。俺は俺で通話記録を提出しようか随分悩んだが結局そうしなかった。何となく彼はもう生きてはいない気がする。うっすらと事情を悟った俺はある計画を立てた。時間はかかるかもしれないが宮坂の仇を討つためにはこれしかない、そう思った。
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