1.中島沙耶(GK)

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リビングのソファでは、娘の恋人にエリーがゆったりとした口調で尋ねている。 口調は和やかでも、2人の馴れ初めや将来の予定をズバズバ聞いてる。職業病か。 「もう、その位にしておいたら、エリー。こんにちは!イーサン」 私は笑いながら近付き、手を差し出す。 彼は勢い良く立ち上がり握手した。 「初めまして!Ms.SAYA・Nakajima」 「SA--YAで構わないわ。エリー、お茶も出してないじゃない? イーサンは珈琲?紅茶?ハーブティーもあるわよ」 「あ、珈琲をお願いします」 エリーが私のいるキッチンに足を運びながら 「ご免なさい、イーサン。今日を楽しみにしてたから、つい気が急いて」 そう、彼女は穏やかな雰囲気を纏っているが、実はせっかちだ。 「有り難う。沙弥」 私の横に立ち、私の頬にキスをする。 そして自分にはハーブティーを、他の人達には珈琲を入れる為のカップを用意する。 私はケトルに人数分+αのお湯の準備をした。 「今日は2人泊まって行くんでしょ?」 私はクレアに声をかける。 ソファでイーサンに甘える様に寄りかかっていたクレアは、 「うん、私の部屋に」 「ごめんね。どうしてもシフトが代えられなくて。明日のランチは一緒に出来る?」 エリーが謝る。 イーサンと手を繋ぎながら 「無理しないでママ。最近、夜勤明けはヘロヘロでしょ?」 エリーは私の方をキッと睨み 「そんな事ないわ。告げ口したの貴女ね、沙弥」 私は首を竦め 「でも実際『疲れた~』言う回数が増えたわよ」 クレアも 「怒らないで、SA--YAはママの事心配なの」 と援護してくれる。 先日クレアから帰省の連絡があった時、娘の口からエリーに無茶しない様諌めて欲しいと頼んだ。 もう若くはないのだから、夜勤や宿直をこなす回数を少なくして欲しい、と。 長い付き合いの私が言っても聞きはしない。
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