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リビングのソファでは、娘の恋人にエリーがゆったりとした口調で尋ねている。
口調は和やかでも、2人の馴れ初めや将来の予定をズバズバ聞いてる。職業病か。
「もう、その位にしておいたら、エリー。こんにちは!イーサン」
私は笑いながら近付き、手を差し出す。
彼は勢い良く立ち上がり握手した。
「初めまして!Ms.SAYA・Nakajima」
「SA--YAで構わないわ。エリー、お茶も出してないじゃない?
イーサンは珈琲?紅茶?ハーブティーもあるわよ」
「あ、珈琲をお願いします」
エリーが私のいるキッチンに足を運びながら
「ご免なさい、イーサン。今日を楽しみにしてたから、つい気が急いて」
そう、彼女は穏やかな雰囲気を纏っているが、実はせっかちだ。
「有り難う。沙弥」
私の横に立ち、私の頬にキスをする。
そして自分にはハーブティーを、他の人達には珈琲を入れる為のカップを用意する。
私はケトルに人数分+αのお湯の準備をした。
「今日は2人泊まって行くんでしょ?」
私はクレアに声をかける。
ソファでイーサンに甘える様に寄りかかっていたクレアは、
「うん、私の部屋に」
「ごめんね。どうしてもシフトが代えられなくて。明日のランチは一緒に出来る?」
エリーが謝る。
イーサンと手を繋ぎながら
「無理しないでママ。最近、夜勤明けはヘロヘロでしょ?」
エリーは私の方をキッと睨み
「そんな事ないわ。告げ口したの貴女ね、沙弥」
私は首を竦め
「でも実際『疲れた~』言う回数が増えたわよ」
クレアも
「怒らないで、SA--YAはママの事心配なの」
と援護してくれる。
先日クレアから帰省の連絡があった時、娘の口からエリーに無茶しない様諌めて欲しいと頼んだ。
もう若くはないのだから、夜勤や宿直をこなす回数を少なくして欲しい、と。
長い付き合いの私が言っても聞きはしない。
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