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『長いわよ』と言う様に肩を竦め、一生懸命話してる娘に微笑むエリー。
私が親指を立てると、
「何か食べるもの作るね」
と、彼女は台所に戻った。
その後ろ姿をチラッと見て、母親になった彼女のさっきの柔らかい微笑みを思い返しながら、クレアの話に耳を傾けた。
夕飯をご相伴に預かりながら、話は私の近況になった。
「沙弥には好い人いないの?」
「ん~最近の男子はヘタレだからな」
「ふふっ。沙弥が強すぎるのよ」
トマトソースで真っ赤になったクレアの口元を拭きながら、彼女は笑う。
実際、女より質の悪い妬み嫉みにウンザリしている。
今回、新規販路を開拓するにあたってリーダーに抜擢された私に、同年輩の男達の風当たりは強かった。逆に年下の同期達は誉めそやした。
転職して良かった点は、年齢が違う仲間が出来た事だ。
そんな話をすると
「年下君はどう?」
とニヤける。
「あ~駄目。対象外」
私が首を横に振ると
「まあ、何処にでもいるわ。狭量な人達は」
と冷めた面持ちだ。エリーも仕事で苦労しているのだろう。
「開拓って事は、度々こっちに来るの?」
美味しいスパゲッティに満腹になった。
「うん、担当者とメールでやり取りするけど、詰めのところは来るかな」
「じゃこれから、ホテル取らないでウチに泊まってよ」
エリーは私に食後の珈琲を用意してくれた。
「え、迷惑じゃない?」
私は食卓で舟を漕いでるクレアを横目で見ると、
「平気。パワフルな沙弥から元気貰いたいし」
と言って、娘を抱き抱え寝室に連れてった。
そうやって始まった仲だった。
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