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閻魔大王
「ピーン」
8Fに着くとエレベーターのドアが開いた。
8Fにはいくつかの部屋があったが、「閻魔の間」と書かれた部屋がある。
多分間違いないだろう。チャイムがあったので鳴らすと
「はい、どうぞ入ってください」
声が聞こえてくる。
いよいよ閻魔大王と対面かぁ、地獄行きとか言われたら、どうしようか?
緊張感たっぷりに部屋に入ると、そこには、メガネをかけたスーツ姿のスラリとした男が立っていた。
「どうも、ワタクシ黄泉の国役場、所長の閻魔です」
と名刺まで丁寧に渡してくれた。
イメージしていた閻魔大王とあまりにもかけ離れていて、拍子抜けしてしまった。
「で、御用件の方をお伺い致しますが」
丁寧だ、本当に役所なんだなぁココ、
「僕のこの先の行き先を教えてください。」
「えっとお名前は 堤 康二さんでよろしかったですかね?」
「ハイ、僕の名前、知ってるんですか?」
「私には全ての死者のデータが把握できますので」
やっと閻魔大王らしい一面が見えたが、それでも丁寧で優しい所長さんにしか見えない。
「堤さん、堤さんの行き先は「常世」と言う所になります」
「常世ですか、どんな所なんですか?」
康二は恐る恐る聞いた。
「次の人生の始まりまでの休憩所みたいなモノ、ですかね、悪い所ではありませんよ、もちろん極悪人は行けませんし、かと言って堤さんは極楽浄土に行けるほどには、功徳を積まれていません」
「功徳?」
「まぁ、善行つまり良いことですよ、」
確かに自分は特別良いこともしてないし、悪いこともしてはいない。康二は地獄行きじゃないのを知ると、胸を撫で下ろした。
「わかりました。ありがとうございます。」
康二はそう礼を言い、役場を後にした。
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