閻魔大王

1/1

23人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

閻魔大王

「ピーン」  8Fに着くとエレベーターのドアが開いた。  8Fにはいくつかの部屋があったが、「閻魔の間」と書かれた部屋がある。  多分間違いないだろう。チャイムがあったので鳴らすと 「はい、どうぞ入ってください」    声が聞こえてくる。  いよいよ閻魔大王と対面かぁ、地獄行きとか言われたら、どうしようか?  緊張感たっぷりに部屋に入ると、そこには、メガネをかけたスーツ姿のスラリとした男が立っていた。 「どうも、ワタクシ黄泉の国役場、所長の閻魔です」  と名刺まで丁寧に渡してくれた。  イメージしていた閻魔大王とあまりにもかけ離れていて、拍子抜けしてしまった。 「で、御用件の方をお伺い致しますが」  丁寧だ、本当に役所なんだなぁココ、 「僕のこの先の行き先を教えてください。」 「えっとお名前は 堤 康二さんでよろしかったですかね?」 「ハイ、僕の名前、知ってるんですか?」 「私には全ての死者のデータが把握できますので」  やっと閻魔大王らしい一面が見えたが、それでも丁寧で優しい所長さんにしか見えない。 「堤さん、堤さんの行き先は「常世」と言う所になります」 「常世ですか、どんな所なんですか?」 康二は恐る恐る聞いた。 「次の人生の始まりまでの休憩所みたいなモノ、ですかね、悪い所ではありませんよ、もちろん極悪人は行けませんし、かと言って堤さんは極楽浄土に行けるほどには、功徳を積まれていません」 「功徳?」 「まぁ、善行つまり良いことですよ、」  確かに自分は特別良いこともしてないし、悪いこともしてはいない。康二は地獄行きじゃないのを知ると、胸を撫で下ろした。 「わかりました。ありがとうございます。」  康二はそう礼を言い、役場を後にした。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加