中森さん

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いた。同じクラスの御山さんが俺を見ていた。  御山さんは可愛くておとなしくてマジメな子だった。俺は少し可愛いと思っている。全てが終わった、と思った。神様はやはり意地悪だった。  俺はテンションがとても下がりながらも降りて、御山さんを信じて、口にひとさし指を立てて「シー」ってやった。御山さんが頷いたのが見えた。  それを見て降りて俺は歩いた。俺の事を見たのが御山さんで良かったのか複雑だった。多分みんなにバレやしないだろうと思うけど、よりによって気になっている御山さんに見られたのが歯がゆかった。  漏らしたというのはバレただろうか。半ズボンからはそんなに出ていないけど。はぁ、本当に最悪だ。  今頃、みんなは昼休みを終えて掃除の時間だろう。多分「中森はどこ行った」って騒いでる。  いつもみんなで行く駄菓子屋が見えた。そこのおばあちゃんと目を合わさないように急いで通った。というか通行人にも会いたくなかった。  それから路地を何回も曲がったり真っすぐ歩いたりして家に着いた。  インターフォンを鳴らす前に、お母ちゃんに何と言おうか考え悩んでいた。  神様は全て見ていたのではないかとさえ思った。その罰だったのではないかと頭によぎった。  昨日、家で夜中にこっそりと、お母ちゃんが楽しみしていた神戸プリンを食べたのが、漏らした事に全て繋がっているのはないかと思った。  神戸プリンはつい最近、旅行で神戸に行き買ってきたやつだ。食べた瞬間、俺は驚いた。プッチンプリンもめちゃくちゃ好きだけど、それをはるかに超えていた。高級な物なのか知らないけど、有名な理由が分かった。  頬がとろけるくらいに甘くて、カスタードの味やカラメルの味が凄かった。そしてそのプリンを、母ちゃんまだ一個も食べてない。とっておきの楽しみでずっと冷蔵庫に入れていた。きっと今日の昼にでも食べようとしていたと思う。だから今日の朝、誰よりも早く起きて、自分で昨日の晩御飯を電子レンジでチンをして急いでご飯を食べて、早くに家を出て学校に行った。  空は太陽があるだけで、雲一つなかった。汗で身体中びっしょりだった。  インターフォンを押した。 「はい?」  母ちゃんの声がした。すごく用心をしているようだ。 「……母ちゃん、俺だけど」 「……は?え?タダシ?」 「うん」 「何してるのアンタ?」  それからして急いで階段を降りる音がした。俺は決心した。  ドアが開かれて、お母ちゃんが出てきて目が合ったと同時に、 「母ちゃんごめん!漏らしてしまって……。なんかみんなにバレたくなかったから帰ってきた」  俺は全てのものが溢れてきたのか、途中で目や鼻から液体が出てきた。  
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