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「うん、そうなんだけどね。今度時間合わせて会わない?」
中森ママの言葉は歯切れが悪かった。多分、知られたくない何かがあるのかな、と推測した。
「うんいいよ。じゃあまたこっちから連絡するね」
「うん、できたら夏休み入ってからが良いかな」
そう言って電話を切った。頭や耳に汗をかいていて携帯のブラックアウトした画面は濡れていたので、ポロシャツの裾で拭いた。
辺りを見渡す。誰もいなかった。念のためトイレの中も覗いた。誰もいる気配はしなかった。
廊下の窓を見る。まだ外は日が暮れておらず、明るかった。
職員室に戻る。残っているのは、俺と2年1組の担任の林田先生と6年2組の森下先生だけだった。
席に着き、今日の2時間目の算数のテストの丸付けをしながら、ふと林田先生と森下先生の夜の営みの姿を妄想する。それに3Pでやる場合、どうなるのか妄想してしまった。
中森ママから連絡が来たのは、確か家庭訪問が終わった3日後くらい。家庭訪問の時、一番若く物言いもサバサバしててずば抜けて容姿が綺麗だったというのが印象深く、正直連絡が来た時、俺は妙な嬉しさが湧き出た。
案の定、そこからは何事も障害が無く、関係を持った。一度だけ、とお互い約束した。
これが誰かにバレたりでもしたら、俺の人生ピンのレベルではないな。そんな事を考えたものだから、丸付けを失敗した。
今度、ベッドの上で中森君がなぜ消えたのか訊いてみよう。俺だけには教えてくれるはずだ。
丸付けが終わりテスト用紙を一枚捲り横にずらす。中森君のテスト用紙が現れた。丸付けをしていく途中、中森ママの声や身体が蘇ってくる。不意に、テスト用紙を指でなぞり、赤丸の所をなぞった。
中森さんが卒業するまではきっと教師は続けられるな、と確信した。
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