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「目的地付近まで来たら、代わればいいじゃないか」
「そんなめんどくさいですよ、せん……専務。
乗り換えるところを見られても面倒ですし。
あ、そうだ。
乗り慣れない車での私の運転が心配なら、私の車で行ったらいいじゃないですか」
と提案してみた。
「お前の車はどれだ?」
と問われ、ちょうど斜め後ろにとまっていた車を指差す。
可愛らしいピンクのもこっとした車だ。
「……あれで行くくらいなら電車で行くぞ。
体面がどうとか言ってるのに、本末転倒だろう」
相変わらず、細かいことにうるさい男だ。
いつぞや、地学なのに、漢字にハネの部分がないと言って、三角にしやがったからな、と思いながら、
「はい、じゃあ、鍵開けてください。
遅れそうなので行きますよー」
と専務の車の運転席側に行き、言うと、
「……態度のデカイ秘書だな」
と言いながらも、京平はドアのボタンを押して、鍵を開けてくれた。
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