遺失物相談係の女

2/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「あら、またあなたなの!」  入って来た男の子を見て、わたくしはついそう叫んでしまった。 「へん、また俺でごめんよ」  生意気にそう言った男の子は、上下とも緑色の服を着ている。木の葉で出来た奇妙な服で、いつだってこの格好だ。遺失物相談係に来る時はこれ、と決めているのか、それとも他の服は持っていないのかも知れない。 「まさか、また落としたんじゃないでしょうね」  男の子は身軽なスキップでぴょん、ぴょんと近づいて来ると、わたくしの前にある相談者用の椅子にぴょんと座った。床に届かない脚をぶらぶらさせている。 「見ればわかるだろ?」  悪びれた風もなく、そう言うので、わたくしはデスクの下に頭を入れて、男の子の足元を見た。そして深くため息をつくと、元の姿勢に戻った。 「どうしてあなたは、懲りないのかしら」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!