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夢から醒めて
休みの翌日は少し疲れが残る。
幸せで楽しかったのは本当。
その反面、考えすぎてしまう。
仕事にも身が入らない。
休日明けは好きじゃない。
―――
元々しょーちゃんは、休日に予定を詰めて出かける人だった。
それが、私と暮らしてからは出かけることが減った。
1人の休みでは出かけてるけど、私の帰宅に合わせたり、飲みに出るのも減ったと思う。
元々全力アウトドアの人が、1日家にこもりっぱなしなのは苦痛じゃないのかな?
それが心配で仕方ないし、申し訳ない。
私の存在って、邪魔じゃないかな?
もちろん、愛されてるのは全身で感じる。
昨日だって…すごく幸せだった。
私も大好きだからすごく嬉しい。
けど。
私が彼の足枷になってないだろうか。
仕事のために事実婚を選ぶ人が、この新しく宿った命の存在を知ったらどうするだろう。
世間に公表?今さらそれはないだろう。
認知は?いや、婚姻届を出さない時点で結果は分かっている。
…そもそも、喜んでくれるのだろうか。
私の存在ごと、疎ましく思われないだろうか。
テレビの中のしょーちゃんには、私の存在は必要ない。
永遠に闇に隠れる存在なのだ。
私も、そしてこの子も…。
私だけなら耐えられる。
だけど…。
この子はいずれ私の籍に入り、父親は空欄。
マンション内で私の存在は隠せても、子連れとなったら目立つに違いない。
一緒に暮らし続けるのも難しいだろう。
事実婚で、別居?
それって、もう他人じゃない?
認知されない子供。父親が誰かも話せない。
成長するにつれ、子供が辛い思いをするかもしれない。
考えれば考えるほど、突きつけられる現実が怖くて怖くてたまらない。
本来喜ばしい事なのに、しょーちゃんに話せない。
元々、私たちは出会ってはいけなかったんだ。
もしかしたら、私はまだ眠っていて夢の中にいるのかも。
―――
本当の私は、しょーちゃんの奥さんなんかじゃないんじゃないか。
地元に嫌気がさして、上京してきた田舎者。
都心から離れた、職場近くのそこそこのアパートで、慎ましく一人暮らしをしてるんじゃないか。
カップラーメンでもすすりながら、テレビの中でキラキラ輝くしょーちゃんを眺めるだけの、その他大勢なんじゃないか。
今まで味わった幸せは、やっぱり全部夢なんじゃないか…?
―――
仕事が終わり、帰宅しようと駐車場に行くと、ワインレッドのMINIが停まっている。
私のカバンにはキーが入っている。
夢みたいだけど、夢じゃない。
ちゃんと全部、現実なんだ。
幸せだけど、逃げられない現実。
これからどう向き合っていったらいいんだろう…。
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