10人が本棚に入れています
本棚に追加
夫の休日前夜
俺のスケジュールは何ヶ月も前から決まっている。つまり、休日も。
妻も俺の休みに合わせて休みを取ってくれる。
正直、すごく嬉しい。
妻も、休日を共に過ごしたいと思ってくれているのかと思うと、顔が緩んで仕方がない。
それくらい、俺たち夫婦は顔を合わせることが難しい。
休日の前はできるだけ早く帰宅するように心掛けている。
…まぁ、実践できているかは別として。
少しでも早く妻に会いたいから。
いつもは布団で寝ている妻も、休日前はリビングのソファで寝てしまっている事が多い。
待っていてくれたのだろうか。
起きてるうちに帰れなかった申し訳なさと、いつもは暗いリビングが明るく、そして妻がいることが、もう嬉しくて嬉しくてたまらない。
俺はこっそり頬にただいまのキスをして、シャワーへと急ぐ。
―――
寝支度を整えたら、妻を抱えて寝室へ向かう。
大抵、動かすと妻は起きる。
「あ…しょーちゃんだ。おかえりぃ…」
「ただいま、さくら」
やっと、起きてる姿に会えた。…半分寝てるけど。
やばい、ニヤけてしまう。
さくらは眠そうにしながらも、しっかりと腕を首に回してくれる。
この瞬間がとても愛おしくて好きだ。
布団に並んで横になる。
どちらからともなく寄り添って、鼻先がくっついてしまいそう。
俺はさくらの目をじっと見つめ、目を閉じながら唇を重ねる。
「続きはまた明日ね。今日も待っててくれてありがとう、おやすみ」
明日は目覚めた時から隣にさくらがいる。
嬉しい!楽しみ!
何をして過ごそうか!
ワクワクしながら目を閉じていると、隣でさくらがゴソゴソと動き始めた。
近すぎて寝にくかったかな?
そう思うより先に、体をこちらに向き直し、指と指を絡めて、色っぽく開かれた唇が俺のそれに重なった。
「続き、楽しみだね。おやすみ」
さくらはいたずらっぽく笑い、背を向けて寝てしまった。
俺は寝られないような、幸せな夢を見て寝られるような、なんとも言い難い状況に追い込まれてしまった。
最初のコメントを投稿しよう!