10人が本棚に入れています
本棚に追加
夢の国
am10:00
目が覚めると、隣がいつもの抜け殻で驚いた。
飛び起きてリビングへ走ると、そこにはまったりカフェオレを飲むさくらの姿が。
「しょーちゃん、おはよー!一緒に飲む?あ、グレープフルーツがいい?」
俺は目が覚めた時、さくらに隣にいてほしかった。
子供のようにムスッととしながらさくらに近付き、
「…さくらがいい」
と、正面から抱き着いた。
背中にさくらの腕がまわる。幸せだ。これは…!?
「もう!朝からやめてよ〜」
背中をバシッと叩かれて腕が解かれる。
そして何も無かったようにマグカップを片付け始めた。
…俺は結構本気だったんだけどな。
―――
pm1:00
遅い食事をとりながら、録画したドラマを横並びで見る。
当たり前の日常、という感じが幸福感を助長させる。
浮かれた俺は、またさくらに気まぐれにキスをした。
まずは頭を抱き寄せて。
髪に、そして額、頬へと唇を落としていく。
深い意味は無かったが、なんだかさくらの様子がおかしい。
耳まで真っ赤で、ゴソゴソと居心地が悪そうだ。
…ははーん。
pm2:30
俺はさくらの手を引き、寝室へと向かった。
―――
pm5:15
俺の腕の中にいるさくらは、もう晩ごはん作りたくなーい、と胸に顔を埋めてくる。
体温を直に感じている、こんな時にしか見せてくれない、甘えんぼモード。
この特別感が、たまらなく愛おしい。
「じゃあ今日はデリバリーで!」
「やったー!でもその前にお風呂入りたいな」
まだまだ甘えんぼモードは継続中のようだ。
「じゃ、久々の泡風呂…やっちゃいますかね!?」
「んふっ」
―――
pm6:00
浴室は泡でモッコモコ。
ドアを開けた瞬間2人で笑い合った。
向かい合って浴槽に浸かる。
何となく、俺の視線が泳ぐ。
さっきまで肌を重ねていたというのに、いざ明るい所で裸を目にするのは、いつまで経ってもドキドキする。
慣れてくればお互い泡を塗り合って、子供のようにはしゃぐんだけどね。
さくらなんて、ビキニ風に上手く塗って、ポーズキメててまじウケる。
ふざけて、笑って。
たったそれだけのことだけど。
俺にとっては最高に癒される休日。
―――
pm8:00
さくらは夕飯を食べ終えると、すぐに布団に潜ってしまった。
明日も朝が早いらしい。
俺も一緒に布団に入る。
「来なくてもいいのにぃ」
「さくらが寝るまで、ずっと一緒にいたいんだよ。俺が」
大事なことなので2回言う。
さくらの朝は早い。
それでも並んで布団に入ると、昼過ぎの出来事を思い出してしまう。
まさに据え膳。
また髪にキスをして、額、頬と唇を落としていく。
本気半分。期待を込めて。
「もう今日はダメだよ」
さくらが俺の頬に手を添えて顔を離していく。
年下のさくらにたしなめられ、その表情がいつもよりも色っぽく見えて、なんだか物凄くドキドキした。
「…トイレ。行ってくる」
「行ってら〜」
…俺はトイレで虚しくクールダウン。
布団に戻ると、さくらはもう眠っていた。
煮え切らない想いをが抱えながら、さくらの頬におやすみのキスをする。
休日だけは、逆転するキス。
それもなんだか特別な気がして、俺は好きだ。
さて、まだまだ夜は長い。
さくらが寝ると同時に、夢の国から現実に引き戻される。
俺は仕事の資料を広げ、片っ端から目を通していった。
最初のコメントを投稿しよう!