星降る夜に首飾りを

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私は魔法の力なんて信じていなかった。 そして悪鬼が人を魅了し、死なせてしまうというのも信じていない。 でも今は少し違う。 星降りの翌朝。母親が"4"人分の朝食の準備をしている。それは何気ない朝の風景のように見える。いつも通り、"何一つ変わらない"朝。 私は2人分の牛乳を運び、料理の乗った2人分の皿をダイニングテーブルに運ぶと席に着き、テーブルの下でこっそり”その手”を握った。 「本当に昨日は心配だったのよ。帰ってあんたの顔見たらホッとしちゃった」 科白通りの表情をした母親が少し微笑んで父の皿をテーブルに置く。 「大袈裟なんだよ。そんな小さい頃のこと覚えてないんだし」私は苦笑する。 「でも星を浴びて生還した人がよくまた星降りに入って死んじゃうニュースも多いじゃない。悪鬼に魅了されたら忘れられないって。だからいつも本当に…」 「それ覚えてられるくらい大きくなってから遭遇した人の話でしょ。”覚えてない”もん害も何もないでしょ。今だってピンピンしてるじゃん」 「そりゃね。ピンピンしててもらわなきゃ困るわよ」 母親はキッチンで朝食をつまみながら弁当を詰め始めた。父と母、それから私と"誰か"の分だ。当然のようにそれは用意されていく。 誰も、異変に気づかない。
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