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高校二年生ぐらいになるといわゆる自立心が芽生えてきた。このままだと一生両親の言いなりになるという恐怖から、ここから遠い、寮付きの大学に通うことにしたのだ。
このことは出願できる日まで心の奥底に隠していた。両親が望まない大学に進学しようものなら反対されていたに違いない。特に母は「あなたのためよ」と言いながら、都合のいい大学に進学させようとしたに違いない。
父の考えも母と同じだ。父は基本的に寡黙だが、たまに口を開けば母と同じことを言う。似た者夫婦だ。
欲を隠し、悟られないように振る舞う。
慣れたとはいえ、ずっと隠し事をするのはしんどい。もっと正直に自分のやりたいことを、声を大にして言いたい。
ガチャガチャと鍵を回す音が聞こえてきた。母が帰ってきたのだ。
鏡から離れて「ただいま」と言うために玄関へと向かう。
今日で隠し事は終わり。
明日からはなんでも自分で決断するのだ。
出願する際の書類のチェックはされるだろうが、何を言われても変える気はない。勝手に受験する大学を変更されたらボイコットしてやる。
「おかえり」
強い意思を胸に秘め、いつもの笑顔を顔に貼り付けて、上機嫌に母を出迎えた。
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