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隠していたのは自立の心
「隠し事が多い人生でした」
鏡に向かって告白する。
真っ直ぐな視線を受けた彼は、微動だにせずじっと次の言葉を待っている。
「今、僕が胸の内で抱えていること、これが最後の隠し事になると思います」
自信なさげな顔を叱咤するように頬を叩く。凛々しい顔付きになるように眉を上げ、決意の言葉を口に出す。
「明日、都内の大学を受験するための手続きをします。これは、父さんと母さんに相談せず、僕の意思で決めたことです」
親に何も相談せずに物事を決めたのは初めてだ。
こんなことを誰かに言おうものなら、「高校生にもなって?」と揶揄されるだろう。
小さかった頃からアレもしたいコレもしたいと思っていたが、口に出すたびに母から否定され、父は母の言うことを「うん、うん」と頷きながら肯定するのだ。
いつしか、自分の希望を話さなくなった。
「うちの子、欲がなくて」とは、母の口癖だ。親戚一同が揃う正月になると決まってこの言葉を口にしていた。
一時期は聞くのが嫌で母に近付かないようにしていたが、成長するにつれて気にしなくなった。きっと色々な経験をして寛容になったからだろう。
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