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世話焼き後輩を煽ったら甘く返り討ちにされました。
「俺たち、別れようか」
────きっとそんなことを言われるだろうと心構えていたとしても、いざその時を迎えるとやはり胸が張り裂けそうな思いがする。
きっかけはほんの些細なすれ違いから。
少しの間、会えなかったり、連絡を取らなかったり。ようやく会えても、何かが変わったと察してしまえるような空気感が二人の間を流れていて。
それに気が付いたときから、こうなることは分かっていた。
そして決まって言われるのが、この一言だ。
「他に、好きな人が出来た」
幸野木ミカコの恋愛遍歴は、その言葉とともにあった。
◆◇◆
「あー! くそー! 男なんてぇ……!」
「はいはいはい、そんな大声出したら近所迷惑ですよ。ほら、先輩んち着きましたから」
ミカコが自宅に着いたのは午前0時を過ぎた頃。
職場の後輩である四方井ハルトを伴わせての帰宅だった。
「もーやだぁ、歩きたくないー」
「ちょっ……しがみつかないでくださいよ! って、もう!」
「やーだぁー! ベッドまでつれてってー!」
「ああもう、本当に世話が焼ける先輩だな……」
無理やりハルトの背に体重を乗せ、引きずられるように運ばれる。
単身者向けの狭くも広くもない1Kなのでベッドまでの道のりは短い。
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