#プロローグ

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初めて人を好きになったのは、たぶん幼稚園の頃だったと思う。 名前もよく覚えていないけれど、人見知りで仲間に入れなかった俺に「ひろとくん、いっしょにあそぼう」と声を掛けてくれた可愛い女の子だった。 中学三年生の春、周りに煽られてなんとなく付き合い始めた彼女には「話がつまらない」と三カ月で振られた。 高校二年生の夏、告白されて流されるように付き合い始めた彼女には「何を考えているか分からない」と半年で振られた。 大学一年生の秋、その場の雰囲気で腐れ縁の幼馴染に告白をしてみたら「手近で済ませようとするな」とバッサリ振られた。 それからは来る者は拒まず、去る者は追わず。適当に何人かの女と付き合ったけれど、どれも本気になんてなれなかった。 俺の恋愛なんてこんなもん。そう諦めていた。 でも、二十七歳の冬、俺は初めて恋に落ちた。 その相手は哀しい目をした風俗嬢だった。
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