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「なに? 翔太、もう寝たよ」
「うん、わかってる。智隆さんは? まだ仕事中?」
「ううん。さっき翔太と一緒に寝ちゃった」
「そっか……あのさ」
「なによ」
「さっきの乾杯の続き、しない? 明日あなたも仕事休みなんでしょ?」
「え、二人だけで? 今?」
「うん。よく考えてみたらさ、最近、翔太のこと以外では、二人で話してなかったなーって」
「なに、いきなり。なんかキモいんだけど」
「そうそう、キモいキモい。キモくていいから、お酒持ってらっしゃいよ」
「……まさか、再婚とか、そういう系の話?」
「ちーがいますぅ。ただ、愛する我が娘としゃべりたいだけですぅ」
「やだ、もうできあがってんの? ほんっと、いっつも勝手なんだから……」
画面から娘が消えて、かすかに冷蔵庫の扉を開ける音がした。
「はい、じゃ、改めましてもう一回、かんぱーい!」
「かん……ぱい」
娘のしかめた眉と、笑いを噛みつぶしたような口もと。
あれ? この子、こんなにかわいい顔してたっけ。私はタブレットの奥をじっと見つめたまま、三杯めのビールに喉を鳴らした。
<了>
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