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「青空君、何か悪い事したの?」
「そ、そんな訳無いよ。ただ飲みに付き合うだけだから」
「わかってる」と悪戯に笑う彼女を前に、一気に安堵する。
しかし、そう気遣ってくれながらも、少し寂しそうに見える彼女がたまらなく愛おしく、罪悪感が募ってしまった。
恐らく、締め切りには余裕があるが、もうすぐ新作が書き終わる筈だ。何なら今日中ぐらいだろう。
いつもはお疲れ様会と称して、ちょっと豪華な夕食を2人で食べたりする。
それが今日出来ないからこそ、こんな表情されると思わずさっきの質問の答えを言ってあげたくなるが、グッと堪えた。
「だからさ。今回のお疲れ様会はどっか行こっか? 明後日の日曜日とか時間有る?」
この言葉で彼女の表情がパッと明るくなるのがわかった。しかし、俺の方は体内の諸々が浮いている様な感覚を必死に抑えている。
「時間作る。新作書き終わらせる。てか殆ど終わってるけど」
「読ましてよ。書き終わったら」
まぁ、彼女の小説の校正を担当するのは俺だから仕事でもあるけど、ファン1号としても非常に楽しみだ。
「お気に召すかわかりませんが」
言葉とは裏腹に、彼女の声は自信に満ち溢れていた。やっぱり彼女は強くて、凄い。そんな事は小学生の時から知っているけど。
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