1つ目『ちょうど俺も行こうとしてたんです』

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1つ目『ちょうど俺も行こうとしてたんです』

 僕は『青空』が大っ嫌いだ。  蝉の声に反響してか、景色がユラユラ揺れる中、真上の憎い相手を精一杯睨んでやる。だけど、小学生5年生の、いや、クラスで一番チビの僕が睨んだって、隠れてくれるはずがない。むしろ、一層日差しがきつくなってるのは、完全に僕をバカにしてる。 「おいデブ勉! 早く来いよ!」  清水君は、ランドセルを4つも背負って汗だくになっている僕を怒鳴りつけた。その横に居る前田君や吉川君も、この空気に乗っかってヘラヘラ笑っている。勿論、3人ともランドセルを背負っていない。  清水君は僕のクラスで一番足が速くて、勉強もゲームもできる人気者。身長ももうすぐ170いくとか。女子達がキャッキャと騒いでたのを聞いた。横にだけデカい僕とは正反対な存在だ。  前田君と吉川君は清水君と同じ所でサッカー習ってるらしい。それでいつも清水君の近くで一緒に僕を笑ってる。 「ご、ごめん。今行く!」  そう言って、歩道の右側にあるブロック塀に手をつきながら叫んだ。この塀が無ければ、向こう側に居る先生達が気付いてくれるかもしれないのに。それが清水君達の味方をしてるように思えて、この屈強なコンクリートも僕は嫌いだ。  他にも、道端の石ころだって投げられるから嫌いだし、ゴミ箱に捨てられた筆箱も、体型をバカにされる水泳の時間も、無駄に重いランドセルも嫌いだ。  でもやっぱり、『青空』が一番嫌い。
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