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2つ目『青田 こーき』
「すみません。注文まで手伝ってもらっちゃって」
スターフロント新作のホットチョコレートを前に、ちょこんとテーブル席に座った彼女が頭を下げる。
どうやら、友人からここの新作が美味しいと聞いて学校帰りに寄ろうとしたが、道がわからなくなってしまったそうだ。
1人で何でもやろうとする所が変わっていない。
注文が済んだ際「お互い1人だしよかったら」と声を掛けられた俺は、昔より成長しただろうか?
「私、中学まで目が見えてたので、この駅も迷わないと思ってたんですけど…… ホント、迷惑かけてしまって……」
「いやいや、迷惑だなんて」
ぎこちない2人の間で、2つの白い湯気と甘い香りが陽気に漂う。上手く話を広げられない俺はやっぱりまだまだらしい。黒を基調としたデザインの店内と温かな木目調のテーブルが大人っぽくて、より自分の幼稚さを浮き彫りにさせていた。
「あの…… 本当に私と飲んでて大丈夫ですか? お仕事の邪魔とかになってませんか?」
ホットチョコレートに口を付けた時、あまりの熱さと、思いもよらない彼女の言葉に「あっ!」と声を出しむせてしまう。
そうか。彼女には俺の顔も制服も見えてない。
「だ、大丈夫です。俺、あ……」
『足立 青空』と言いかけた言葉を、俺は飲み込んでしまった。
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