2つ目『青田 こーき』

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 今朝までは思ってた。『きっと今の自分なら』って。それだけ見た目が変わって、多少なりとも前より自信が付いたから。  けれど、今の俺が見えない彼女にとって『足立 青空』はただのチビでデブな小学校のクラスメイトでしかない。そして、それはこれからも変わらない。 「あ、青田 こーき。西高の2年生…… です」  2度目の嘘は、ピリリとした舌の火傷と共に噛みしめた。『』か『』かも曖昧な名前。誰だよそれ、て自分で思いながら。 「あ、じゃあ同い年だったんだ。ごめんなさい。落ち着いた声されてたから…… 私、今岡 由希。分計盲学校の2年生」  申し訳なさそうにしながらも、どこかホッとしたような笑みを浮かべる小さな顔は予想通りの名前を名乗った。  分かってた事だし、彼女にとっては大きなお世話だろうけど、何て名前かわからない感情が笑顔を難しくさせる。  そんな事知らない今岡さんの優しい表情は自分と真逆なほど綺麗で、ズルいとさえ思ってしまった。いや、勝手にショック受けてる自分本位な考えが一番悪いんだけど。
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