2つ目『青田 こーき』

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 真剣に褒めちぎってくれる彼女に、これ以上返す言葉が見つからない。ここは『そんな事ない』と否定するべきだったか?  でも、お世辞だったとしても、今だけ馬鹿になって信じさせてほしい。  褒めてくれた彼女を凝視する事が出来なくて、咄嗟に視線を逸らした時、顔の赤い自分が窓ガラスに映った。  きっとこれは少し鬱陶しい程効いている暖房のせいだ。多分。  けれど、そんな自分がくっきりと窓に映ったのは、外が暗くなり始めているから。それだけは誤魔化せない。 「あ、えっと……」 『そろそろ時間大丈夫?』  その一言が彼女の柔らかい笑みのせいで上手く出てこなかった。  今日、偶々彼女はこの喫茶店に寄ったから会えたものの、次会えるかなんてわからない。  だから、もう少しだけ。  そんな考えを振り払う様に、ホットチョコレートを流し込む。目が見えない今岡さんを夜道帰す訳にはいかない。 「ぞ、ぞろそろ、時間大丈夫?」  湯気が立っているのを一気に飲むもんじゃなかったらしい。喉の奥のひりつきが責め立てる。  それでも振り絞りながら訪ねた俺に、今岡さんは「あ、もうそんな時間だった?」と栗色の瞳をぱちくりと瞬きさせた。 「ここに入るのも時間遅かったしね。話してたらあっという間だったな」  そう満足気に微笑むと、今岡さんもホットチョコレートを飲み干す。  その姿に一瞬彼女の喉が心配になったが、彼女はケロッとしたまま、隣に置いてあるリュックを自然な動作で背負って見せた。  これだけ見れば、まるで目が見えている様だ。けれど、近くに立てかけてあった白い杖がそうじゃないと主張する。
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