2つ目『青田 こーき』

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「私、2番ホームだから、ここでお別れだね」 「そう…… だね……」  ホームに上がる階段前。するりと抜けた今岡さんの腕の代わりに、冷たい風が体の横へ纏わりつく。 「あ、あのさ…… もし……」 『間もなく、2番ホーム、普通○○行きの電車が参ります』 「あ、ちょど電車来た」  モタモタしていた自分の声を軽快な音楽とアナウンスが遮った。そして、今岡さんの気も簡単に奪っていく。 「今日は本当にありがと! 楽しかったし、助かったよ」  そう少し急いで今岡さんは礼を言うと、カンカンと音を鳴らしながらホームへと向かっていった。  きっと、咄嗟に伸ばした俺の手なんて、彼女は一生気付く事無いだろう。 「……はぁ~」  遠のいていく栗色の髪を見送った後、今日1日の羞恥心と不甲斐なさと、その他諸々が一斉に吐き出された。  気付けば勝手に足の力が抜けて、その場にしゃがみこんでいる。何やってんだろ。本当に。 「『じゃあね』も言えてねー……」 『きっと今の自分なら、今岡さんと話してもあんなに挙動不審にならないだろう』って? そう言ってた今朝の自分に言いたい。  そんな甘くねーよ、ばーか。
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