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3つ目『小説好きなんだ』
今岡さんと出会って一週間後。俺はまた喫茶店、スターフロントの前に居た。いや、土日以外ずっと通い詰めた。
理由はホットチョコレートにはまったから。お願いだから、そう言う事にしといてほしい。
今岡さんと再会してから3日ぐらいはずっと気分がフワフワしていた。けれど、当り前ながらまた会えるんじゃないかって夢見がちな自分に嫌気がさしてきている。
だから、もう今日で毎日来るのは終わりにするつもりだ。小遣いだって結構きつい。
それに、冷静になった今だから思うけど、あの日全然会話は弾んでないし、着席してすぐ解散してるし、青田って誰だよって話だし。
多分、この先一生思い出しては消えたくなる黒歴史だ。それをもう一度なんて、気が狂ってる。
俺はスターフロントの前でスマホを弄るフリしながら、流れる人混みへと視線を移した。正直、寒い。それにさっきから、知らない髪型しか見えない。我ながら馬鹿だ。
その時。
「あの…… すみません」
そう女性の声が横からした。
縮まる心臓から期待が一気に溢れ出す。ほんの一瞬固まってから声の方へと顔を向けた。
そこには白い杖…… ではなく、茶色の杖に白髪の知らないお婆さんが背を丸めて立っている。
「地下鉄の行き方、お訪ねしたいんですけれども……」
「あ…… はい……」
本当、俺は単純で阿保だ。
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