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それから10分後。
スターフロントの温い空気とコーヒーの渋い匂いに包まれながら、前と同じテーブルで前と同じ飲み物が並んでいた。
違いは前よりかは会話が弾んでいる事。と言うより、今岡さんはお喋りらしく、聞き飽きない話をいっぱいしてくれる。そして、要所要所に話を振ってくれる。
やっぱり今岡さんは凄い人だ。
「そういやさ、前に呼び出されてたって言ってたけれど、今日は呼び出されなかったの?」
「流石にそんなしょっちゅう無いよ。不良じゃあるまいし」
「ふ~ん」
「いや、本当だって」
わざと信用してない素振りを見せながら揶揄う今岡さん。こんなやりとりは小学生ぶりだろうか。
「でも、何で呼び出されてたの?」
「え? あ、えーと……」
しかし、さっきまでの幸せな時間が、純粋な質問で一気に焦りへと変わってしまった。
適当に進路を決めようとしているなんて言えない。そんな半端な事言うと、何故か今岡さんに怒られる様な気がする。
「ちょっと進路の事で…… 色々と」
「え、偶然。私も進路で悩んでるんだよね」
気まずくて目を逸らした俺に気付かずに、今岡さんはテーブルに身を乗り出した。
「今岡さんって、まだ決まってないの?」
「うーん。本当はやりたい事あるんだけれど、見込みがないっていうか…… 無理って言われるのが怖いというか……」
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