3つ目『小説好きなんだ』

4/8

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
 それから10分後。  スターフロントの温い空気とコーヒーの渋い匂いに包まれながら、前と同じテーブルで前と同じ飲み物が並んでいた。  違いは前よりかは会話が弾んでいる事。と言うより、今岡さんはお喋りらしく、聞き飽きない話をいっぱいしてくれる。そして、要所要所に話を振ってくれる。  やっぱり今岡さんは凄い人だ。 「そういやさ、前に呼び出されてたって言ってたけれど、今日は呼び出されなかったの?」 「流石にそんなしょっちゅう無いよ。不良じゃあるまいし」 「ふ~ん」 「いや、本当だって」  わざと信用してない素振りを見せながら揶揄(からか)う今岡さん。こんなやりとりは小学生ぶりだろうか。 「でも、何で呼び出されてたの?」 「え? あ、えーと……」  しかし、さっきまでの幸せな時間が、純粋な質問で一気に焦りへと変わってしまった。  適当に進路を決めようとしているなんて言えない。そんな半端な事言うと、何故か今岡さんに怒られる様な気がする。 「ちょっと進路の事で…… 色々と」 「え、偶然。私も進路で悩んでるんだよね」  気まずくて目を逸らした俺に気付かずに、今岡さんはテーブルに身を乗り出した。 「今岡さんって、まだ決まってないの?」 「うーん。本当はやりたい事あるんだけれど、見込みがないっていうか…… 無理って言われるのが怖いというか……」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加