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「ちょっと清水! 何やってんの!」
高いけど芯のある凛とした声が、僕の後ろから聞こえてきた。
振り向くと、赤いランドセルを背負った同級生の今岡さんが清水君達を睨んでいる。
今岡さんは僕と変わらないぐらいの身長で、きっと細さはは僕の半分ぐらいだろう。
なのに、僕にできない事をこうしてやってのけてしまう。
「げ! 今岡じゃん。茶髪ヤンキーはどっか行け!」
清水君は嫌そうに目を細めると、今岡さんのあだ名を叫んだ。
今岡さんは栗色の凄く綺麗な髪を肩よりも長く伸ばしている。その髪色と気の強さから、男子達は今岡さんを『茶髪ヤンキー』とバカにする。
でも、今岡さんは「この髪が好きだから」とよく言い返していた。同じ栗色の瞳をビー玉みたいにキラキラさせながら。
「そんな態度とっていいの? 花梨ちゃんに清水の秘密、バラしちゃうよ?」
「ひ、秘密ってなんだよ!」
「え~? ここで言っちゃっていいんだ?」
さっきまで僕に強気だった清水君が、今岡さんの言葉で段々オドオドし始めた。それを見て、今岡さんはニヤリと笑う。
「え~と、実は清水って花梨ちゃんの事が……」
「や、やめろ! クソ!」
今岡さんが言いかけた言葉を遮り、清水君は僕から自分のランドセルを引っ手繰った。それに続いて、他2人も慌てて僕からランドセルを奪っていく。
「覚えてろよ!」
走りながら叫ぶ清水君達は、まるでアニメの悪者みたいだ。そう考えると、今岡さんはヒーローだ。女の子だけど。
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