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自分に話が来ないようにと質問し返した俺は、本当に卑怯だ。勢いが弱まっていく今岡さんを見て、ひしひしと痛感する。
そりゃそうだ。そこまで仲良くない奴に夢語るのは気が引ける。本当は話題を変えるのが“正解”なんだろう。
けれど、今岡さんらしくない弱気な様子や『無理って言われるのが怖い』って言葉に引っ掛ってしまった。
「言い辛かったら言わなくていいんだけれど…… やりたい事、聞いて良い?」
「わ、笑わない?」
「笑わないよ」
恐る恐る尋ねた彼女を勇気付けたいなんて、調子の良い事が俺の頭に過る。そのせいか、見えないだろうけれど精一杯の優しい笑みを浮かべてみせた。
「小説家…… 目指してるの……」
少し照れくさそうに言う彼女を見て、正直驚いた。
勿論、小説家を目指すのは難しい事だと思う。でも、そういう事じゃなくて、今岡さんならやってのけそうと勝手に思ってしまった分、何を怖気付いているのかわからなかった。
「いい夢じゃん」
ホロリと零れた言葉に急いで口を覆ったが、もう遅い。本気で悩んでるのに、そんな安い言葉でいい筈がない。
けれど、そんな考えを無視するように、栗色の瞳がユラリと動いたのが見えた。
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