4つ目『無かったよ』

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 しかし、4時間後、俺は全部読み終わっていた。途中、夕食挟んだお陰でもうすぐ午後11時。  分かった事は3つ。自分は読むのが遅い。 『おじさん』が『叔父さん』に変換されてたり『()』が『〔)』になってたり、この作品には細かい変換ミスが多い。  そして何より、内容は男の自分でもはまる程面白い。  読む前は、恋愛小説だから食パン加えた主人公が新学期早々遅刻しそうになるんだろうと思ってた。  けれど実際は、優しさが裏目に出てしまい、お互いが片思いしてるのに、それを隠して相手の恋を応援するという純粋でむず痒い幼馴染同士の物語。  主人公の二人があまりにも優しすぎて、危うく泣く所だった。  ふと、原稿用紙から目を離し、目の前のパソコン画面に視線を上げる。そこには、最後のページとそっくりな画面が広がっていた。違うのは変換ミスされていない所。  読むスピードが遅いのは、細かい変換ミスを直した修正バージョンを勝手に作りながら読んでいたせいもある。  俺は国語が嫌いだ。だからこそテストの時、何で点を稼ぐかといえば暗記類に頼るしかない。その甲斐あって、漢字はまだ得意だった。  それに、細かな表記ミスは結構読者の気を逸らす。多分、コンテストでも印象が悪くなるかもしれない。折角面白いのにそれは勿体ない。  ただ、この修正バージョンをどうするかが問題だ。始めはメモでもしながら読もうという気持ちから、結果こんなのを作ってしまった。ノリって怖い。
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