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『漢字修正したの作ったよ』と言って渡すか? 『いや、頼んでねーよ』って鬱陶しがられるだろう。
そんな汚い言葉を使わないと思うけど、1人で何でもやりたい性格の今岡さんだ。
やり過ぎ。重い。有難迷惑。今更そう画面の文字が突き刺さってくる。
じゃあ、『何ページ何行目の漢字が違う』って指摘するか? 今岡さんにその指示が伝わるか?
目が見えないから、きっと音声だけではわからない細かいミスをしてるのではないのか。
てかそれって、俺自身も“今岡さん1人じゃ小説家なんて無理“って言ってる様なもんじゃ……
「わかんねー……」
慣れない読書とパソコン作業のせいで頭が回らず机に突っ伏した。すると、当たったマウスがカチっと音を立て、直ぐに画面から変な音が流れ出す。それに釣られ顔を上げれば『保存しますか?』みたいな文字が見えた。
親父が仕事に使ってたのを買い替えるとかで貰ったパソコンだ。いつもはゲームやら動画やらにしか使わない。勿論、こんな通知は初対面。
だけど、『いいえ』を押してはいけないと内容からしてわかる。俺は慌ててマウスを握った。
いや、慌てすぎて、身を乗り出してしまった。その瞬間、左手でキーボードの“N”を押したらしい。
「え……? あ゛!」
やっぱり嫌いだ、こういう慣れない事。青白いホーム画面が悲しく光る中、俺はそれを再確認した。
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