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「大丈夫? 足立君」
僕より小さい白い顔が覗き込むように近付いてくると、心臓の音がドッドッと耳をノックする。
「だ、大丈夫!」
いきなり近くなった距離に、慌てて手で壁を作り横に振った。
普段から汗っかきだけど、今日は暑さとランドセルの重さのせいでいつもよりかいている。だからあまり近付かれると、臭われるかもしれない。いや、もう臭いと思われているかもしれない。
そんな事を考えていると、段々視界が白く濁りだしていく。
「ぷっ! 足立君、眼鏡曇ってるよ」
「あ! え、ご、ごめん」
本当に僕はカッコ悪い。今岡さんを前にしたせいか、そもそもの暑さのせいなのか。ただ顔が火照っている事だけは、眼鏡が曇るぐらい確かだ。そんなカッコ悪さを隠せる訳ないのに、更に慌てて変な返答をする始末。
「別に謝んなくても。ホント、足立君っておもしろいよね」
眼鏡を汗だくのTシャツで拭く僕に、今岡さんは涙を浮かべながら笑っていた。
その表情が清水君を睨んでた顔と同じと思えない程柔らかな笑顔で、やっぱりヒロインって感じに見えてくる。
だからか、恥ずかしながらも、嫌な気持ちは全然しない。
「で、でも、い、今岡さんって、本当に凄いね…… 清水君達相手に、あんな堂々できるなんて。僕にはできないよ……」
どうかその優しい笑顔が終わらないように、沸騰しそうな頭のままで言葉を紡ぐ。大丈夫かな? おかしな日本語になってないかな?
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