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1週間後。
「ほんと、めっちゃ面白かった! 2人の切ない気持ちがグッときて、特にあの場面が……」
スターフロントのいつもの席。2月限定だったホットチョコレートは残念ながら終了してしまった為、並んでいるのは今岡さんのカフェモカと俺のカフェオレ。
今回は俺が饒舌になり、今岡さんが照れ臭そうに聞いていてくれた。
「あ、ありがとう…… そんな細かい感想とか初めてで…… 照れるね。こういうの」
ほんのり頬を赤くしながらも、嬉しそうに言う『細かい』にほっとする。
こちらも初めての本気感想発表だ。『内容が薄い』と思われたくなくて、必死だった。
「この作品も、コンテストに送るんだよね?」
「うん。ただ、これが最後かもしれない……」
少し複雑な笑みを浮かべながら、ぽつりと返す今岡さん。
「え? それって……」
「応募締切が4月でね。その頃って私達3年生じゃん? そろそろ夢ばっかりじゃなくて現実も見なきゃ…… 周りも、盲目の人でも出来る仕事とか、大学とか、進路に向けて動いてるし」
その言葉に、何も言えない自分が居た。
『俺は何事でも安牌ならそれで良いと思う性格だ』
3週間前までの自分の考えが頭に過る。こんな性格だからこそ、挑戦する彼女を尊敬していた。
しかし、だからこそ今岡さんの『現実』って言葉に何も言えない。
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