4つ目『無かったよ』

9/9

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
「俺なんかの感想じゃアテにならないかもだけど、本当に感動したんだ。だからさ……」 『そんな顔、しないでよ』  その言葉を飲み込む。必死に強がろうとしている彼女に言ってはいけないし、自分が言える言葉でもない。 「俺、今岡さんのファン1号になるよ」  そう言った瞬間、今岡さんの表情が一気に晴れたのがわかった。それと同時に、どんどん自分が嫌いになっていく。  本当の小説好きなら、もっと上手く自信に繋がる感想もアドバイスも言えたのに。頼り無いファンで、本当にごめん。嘘を吐いて、勝手に小説直して、ごめん。 「青田君って、いつも欲しい言葉くれるよね…… ありがと」  その表情が見たかった筈なのに。4つ目の嘘は、今までよりも苦い味がした。
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加