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5つ目『増々続きが楽しみになった』
今岡さんのファン1号になって1週間後。また俺達はスターフロントで向かい合って座っていた。
「これ、前の続き…… です」
やっぱり、自分の小説を読んでもらうってのは緊張するのだろう。少し頬を赤らめた今岡さんにそう思いながら、両手で茶封筒を頂く。
「実は、先週凄く褒めてくれたお陰で、凄いモチベーション上がってさ」
「…… え!? ほんと!?」
先週の今岡さんの表情から聞けると思ってなかった言葉に、一瞬にして声が上ずった。そんな様子を「何で青田君が驚いてるの?」と可笑しそうに笑う今岡さん。悪い気なんて全然しない。
「いや、殆ど書き終わってたんだけどね? この小説。でも、まだ最後までは書けてなくて…… これが最後のコンテストって思うと、本当にこれで良いのかなって手が動かなかったの…… だけど、そのプレッシャーが凄く軽くなってさ」
「ありがとね」と今岡さんは優しく笑った。
目線は交じり合っていない。友達と言える程深く知り合ってる訳でもない。何なら俺は本名さえも偽ったまま。
けど、それでも良い。このままで良い。彼女の幸せそうな笑顔を見れるなら。
その瞬間、そう思ってしまった。
頑張って、感想考えて良かった。そうか。これが頑張るって事か。
「こちらこそ、小説読ませてくれてありがと」
そう自然と口から本心が零れた。そして、また彼女は照れくさそうに笑ってくれた。
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