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「そういえばさ、青田君って将来の夢とかある?」
その問いに、和んでいた心情と持ち上げたカフェオレのカップを危うく零しそうになる。
やばい。こういう質問来た時用に答え用意しとくんだった。
「ゆ、夢? え、えーと……」
何が正解? 何が無難? 医者、弁護士、社長……
「わかんねー……」
「あ、悩んでる感じなんだ」
ガクリと肩を落とした時、その優しい声に驚いて今岡さんの方を見た。本音が出てしまったのも驚いたけど、だいぶ小声だった筈。
「わかるよー。何で今進路決めなきゃいけないの?て感じだよね。いいじゃん、自分の好きな時に決めさせてよ」
ちょっと唇を突き出し、拗ねた感じに彼女は言う。
しかし、今岡さんにとっては“次のコンテストが最後”なのだ。少しふざけた言い方だけど、これが彼女の本音だとすぐにわかった。
勿論、その考えは俺も同じだ。
親も、学校の先生も、学生の進路を勝手に期待しだす。そして急かす様に決めさそうとする。大きすぎず小さすぎない将来を。
ただ、夢に一生懸命向き合いながらも時間が無い彼女と、諦めて時間を無駄にしている俺。それを一括りに出来る筈無くて、共感する言葉を簡単に出せなかった。
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