5つ目『増々続きが楽しみになった』

6/9

13人が本棚に入れています
本棚に追加
/76ページ
「昔、美容師目指してたんだ」  そう口を開いた今岡さんは、俺の動揺なんて気付いていないのだろう。  ただ、俺も彼女を止める事が出来なかった。自分の何処かで、知りたいと思う感情が声を抑えていたのだ。 「自分の髪が大好きでさ。髪型って簡単に変えられるけど、その髪が気に入ったら自分に自信も持てるじゃん? だから誰かを自信付けられる美容師って素敵だなって。他にも、高校生になったらメイクの勉強もしたかった。バイトしたお金で雑誌とか服とか買って、命いっぱいお洒落して……」  ここまで聞いて思ったのが『やっぱり止めておくべきだった』。  別に、今岡さんがあからさま嫌そうな表情をしている訳じゃない。少し複雑そうな笑顔をしているけれど。  ただ、それ以外に話を聞いてわかった事がある。  『ありふれた。』は幼馴染のありふれた生活を題材にしているから、この題名だと思っていた。  けれど、ヒロインは美容師を目指していた。他にも、メイクを頑張ったり、バイトで稼いだお金で一生懸命お洒落をする描写がある。  これは“ありふれた”生活をしたかった今岡さんの夢が詰まっていたのだろう。なら、主人公と同じなのがもう一つある筈。 「好きな人に、振り向いてほしかったの」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加