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『上手くいかないとわかってても、片思いを続けて良いですか?』
その言葉を言いかけて止める。答えを聞いてしまえば、もう彼女の小説の感想を言うのも、修正するのも、この時間も、全て無くなってしまう。
上手く説明できないといった表情の彼女を前に、目の奥から感情が漏れ出しそうなのを静かに閉じた。
「ありがとう。頑張ってみるよ」
頑張ろう。だって、こんなに辛くても、嘘吐いても、それでも側に居られるだけで良いとさっき思ってしまったから。
「てか、小説の内容が願望詰まってるとかキモイよね」
照れ隠ししながら自嘲する彼女の表情がほんのり赤く染まっているのがわかった。色々曝け出して語ってくれたのだ。俺を元気付ける為に。何望んでんだよ、これ以上。
「いや、そんな事ないよ。裏話聞けた気がして……」
リュックの上に置いている茶封筒へ目線を落とす。このまま彼女を見続けてたら、何か気付かれる気がして。
「増々続きが楽しみになった」
5つ目の嘘は、ただただ必死だった。何かを壊さない様に、そして悟られない様に。俺は彼女の小説のファンなのだ。だからこれで良いんだ。
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